パリ・ノートルダム大聖堂と首里城
2019年の火災を超えて 復元と文化遺産の価値を考える
イコモス評価書 (2000年9月) からの抜粋 |
「オーセンティシティ」 |
日本では、修理・復元に関する厳格な基準が1世紀以上にわたって設けられており、推薦物件のデザインや材料のオーセンティシティのレベルは高い。オリジナル部分と修理あるいは復元された部分を区別すること、また、修理のための材料の選定に、注意が払われている。戦後すぐに不適切な材料で修理されたケースがいくつかあるが、それらはすでに取り替えられているか、もしくは明確に判別できるようにされている。 これらの修理・復元事業はすべて、実施に先立って行われた、綿密な調査研究に基づいている。首里城正殿の復元は、焼失前の正殿の実測図や写真をもとに、考古学的発掘調査と照らし合わせて行われた。その結果、沖縄の象徴としての価値を持つ、当時の建築の忠実な再現となっている。識名園でも、王家別邸の庭園を正確に再現するために、同様の作業が行われている。 埋蔵考古遺跡は、慎重に発掘され、記録され、良好な状態で保存されている。必要に応じて、滅菌された土や砂の層によって密封され、元の位置に復元された建造物によるいかなる形の介入からも保護されている。今帰仁城や首里城が、その例である。 職人技の面でも、同様に高いレベルのオーセンティシティが認められる。伝統的な技法は、すべての修理・保存事業に広く用いられている。 |